歯科恐怖症について分かりやすく解説する

歯科

当院には歯科恐怖症の方が多数来院されます。今回は歯科恐怖症とは何か、そして歯科恐怖症の人が怖くない治療法、全身麻酔による治療法について説明します。

歯科恐怖症とは何か?

「歯科恐怖症」とは、過去の歯科治療などで怖い思いや嫌な思いをしたことで、歯科治療をおこなうのが怖くなってしまっていることを言います。
たとえば、虫歯治療の際の「キー」という高い音が苦手な人は、少なくないでしょう。

そもそも、病院は病気の人がいらっしゃる場所です。診療を受ける人は、恐ろしい病気を告知されるのではないかと不安を抱き、緊張していることがほとんどです。

歯科で病気を告知されることは稀ですが、舌や歯茎などに重い病気が見つかることがあり、まったく不安を持たずに受診するのも難しいのではないでしょうか。その状況で痛みを伴う治療をされてしまったら、通院が恐怖になってしまうかもしれません。

虫歯の治療では患部の周囲を削りますから、よほど初期の症状でなければ、痛みが発生します。それを抑えるために部分麻酔をしますが、効きが十分でなかったり、あるいは麻酔の効いた状態で唇を噛んで出血してしまったりと、なにかしら痛い思いをした経験は、誰しもあるでしょう。

歯を削る器械を口に入れるのですから、事故もあり得ます。治療中に舌を切ってしまったり、詰め物が喉に落ちてしまったりした経験がある方もいらっしゃるようです。

そういった怖い記憶から、虫歯があるとわかっていても歯科へ行けない方は、歯科恐怖症かもしれません。
恐怖症ではなくても、緊張すると吐き気や動悸がしたり、呼吸困難になったりするパニック障害の方も、歯の治療に不安を感じるのではないでしょうか。

団塊の世代と呼ばれる人たちは特に、歯科恐怖のある方が多いようです。この年代の方たちが子どものころは、治療が手荒な歯科医もいました。「団塊」と呼ばれるほど人口が多かったので、一人ひとりに時間をかけられず、押さえつけて治療されることもあったようです。でも、怖いからといって歯科を避けていると、思わぬ病気にかかってしまうかもしれません。

虫歯や歯周病を放置すると寿命が縮む?

歯の健康は、健康年齢と深い関わりがあるとされます。噛み合わせが悪く、咀嚼能力が低いと消化器官への負担が大きいですし、認知症になるリスクが増えるという調査もあります。厚生省も、1989年度の「成人歯科保健対策検討会中間報告」の中で、日本人の平均寿命である80歳で20本の歯を残す、いわゆる「8020」を薦めているほどで、歯の健康がどれほど重要視されているかわかるでしょう。

また、口腔内の衛生も重要です。「歯周病はあらゆる病気の原因になる」と聞いたことがありませんか? 歯周病が重度になると歯が抜け落ちる危険性が高まります。また、高齢者であれば、口腔内のウィルスが原因の肺炎もあり得るのです。

歯周病を予防するには、歯石をしっかり除去せねばなりません。でも、歯石の除去は手作業ですから、時間がかかります。定期的にケアしている人でも、上下すべての歯から歯石を取り除くには、1時間程度かかってしまうのです。歯科恐怖などで歯科医を遠ざけていた人なら、もっと時間がかかるでしょう。

また、普通に生活をしていればどうしても歯石がつきますから、長い期間歯科に通っていなかったのなら、すでに歯周病にかかっている可能性があります。

歯周病になると歯茎が腫れ、歯磨きなどの軽い刺激でも出血しているはずです。歯石は、スケーリングという器具で削って除去しますから、どれほど丁寧に施術しても、歯周病患者には痛く感じられることもあるだろうと思います。

ただでさえ歯科に恐怖があるのに、また痛い思いをしたら、もう二度と歯科に行きたくなくなるでしょう。せっかく歯石をとって歯周病が改善されても、その後歯科から遠ざかってしまえばまた歯石ができ、歯周病になってしまいます。

でも、あまり大きなストレスがかかると心臓や血管に悪影響があるかもしれませんから、無理な治療もお薦めしません。

恐怖症の人が怖くない治療法

軽い歯科恐怖症なら、穏やかで優しいと評判の歯科医院を探せば、解決するかもしれません。診療日までの時間が空くと緊張感が増幅してしまいます。キャンセルしたくなってはいけませんから、なるべく近日に予約を入れると良いでしょう。少し恥ずかしいかもしれませんが、友人や家族に付き添ってもらうのも一つの対処法かもしれません。

そして、治療の前に歯科恐怖があると伝えておけば、丁寧に診察してもらえるでしょう。
歯科恐怖症の方を治療するときは、患者が不安になったらすぐに施術を中止するなど、対話をしながら時間をかけて行うのが一般的。必要に応じて、精神科と連携することもあります。

でも、虫歯の治療にじっくりと時間をかけられる人ばかりではありません。対話をしても恐怖心が消えない方もいらっしゃるでしょう。また、障害のある方や認知症の方を治療する場合、歯科医がどれほど注意していても、事故が起きる可能性はあります。

当院では歯科恐怖症やパニック障害、認知症や障害のある患者様を対象に、全身麻酔を使った特殊歯科外来を受け入れています。

全身麻酔で眠っているうちに治療が終わりますので、まったく痛みを感じません。また、歯科を怖いと思わずにすめば、また虫歯ができたときも躊躇なく治療の予約できるでしょう。

障害があったり認知症の患者様でも、施術中に動いたりしませんから、事故の心配がありません。安全に治療できます。

健康寿命を伸ばすために歯科治療を軽視できないことはご理解いただけたと思います。カウンセリングや全身麻酔など、恐怖症のある方でも対処方法はありますから、どの方法なら通院しようと思えるか、検討してみてください。

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