睡眠時無呼吸症候群を完治させるために原因を知って、おうちで対策をとろう
睡眠は、活動した体や脳を休ませるための貴重な活動の一つと考えられています。しかし、無呼吸症候群により、睡眠障害が起こってしまうと、充分な睡眠がとれず、体や脳に負担をかけてしまいかねません。
今回は、無呼吸症候群の原因や症状、おうちでできる対策をご紹介します。
睡眠時無呼吸症候群の原因とは?
無呼吸と言っても、まったく呼吸をしないという意味ではありません。定義は、睡眠中の呼吸が10秒以上停止。1時間に5回以上、あるいは7時間の睡眠中に30回以上無呼吸がおきると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
英語ではSleep Apnea Syndromeで、その頭文字から「SAS」とも呼ばれます。
一言で睡眠時無呼吸症候群と言っても、原因は一つではありません。
大きく二つの原因があり、もっとも多いのは、のどや首周辺の脂肪がつきすぎたり、扁桃腺が肥大したりして、気道がふさがってしまう「閉塞性」。睡眠時無呼吸症候群の80%以上を占めています。Obstructive Sleep Apneaを略して「OSA」とも言われ、舌根や口蓋垂などの沈下も原因になります。肥満体格の方に多いのですが、お酒を飲んだ後は筋肉が弛緩して舌根などが上気道に落ち込み、無呼吸が生じる場合もあります。
もう一つは呼吸中枢の異常で「中枢性」と呼ばれます。Central Sleep Apneaを略して「CSA」と呼ばれることも。睡眠中に脳からの呼吸指令が出なくなって、呼吸が止まってしまうものです。
閉塞性の患者は男性が多く、女性患者の2~3倍にも上ります。その理由は、男性の肥満は上半身に脂肪がつきやすく、頸部の脂肪が睡眠時無呼吸症候群の原因となるからだと言われています。
ただ、痩せ型の女性なら安心だというわけではありません。首が短く太い体格の人や小顔で下顎が小さい人、舌根の大きい人などは、体形に関わらず、舌根の沈下によって無呼吸が引き起こされる可能性があるからです。
痩せているのに、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された経験がある方は、鏡の前で口を大きく開けてみてください。舌を下方に下げるように出してみて、口蓋垂……いわゆるのどちんこは見えていますか?もし、見えていないようなら、上気道が狭く、無呼吸が起きやすいと考えられます。
また、更年期を迎えると、女性の患者も増加します。女性ホルモンの一つであるプロゲステロンには上気道を開く筋肉を活性化する働きがあり、更年期でホルモンバランスが崩れると、上気道が開きにくくなるからです。
中枢性無呼吸症候群が引き起こされる原因は、心臓機能や甲状腺機能の低下や、脳幹梗塞をはじめとする中枢性病変などが考えられます。閉塞性と違って呼吸の努力がなく、いびきをかくことも少ないので見過ごされがちですが、患者数も多くはありません。
また、閉塞性と中枢性の混合タイプも存在しています。
睡眠時無呼吸症候群の症状とは?
無呼吸症候群に罹患すると、睡眠中の酸素濃度が下がり、心拍数が上昇します。その結果、脳や体が休息できず、日中の活動が十分に行えません。倦怠感や疲労感、集中できないほど強い眠気を感じるようなら、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみた方が良いかもしれません。
以下の項目に当てはまることが多いようでしたら、念のため検査をお薦めします。
睡眠時無呼吸症候群チェック
- いびきをかいていると家族に指摘される
- 静かに寝ていると思ったら、大きな呼吸をし、いびきが始まることがあると家族に指摘される
- いびきや呼吸がとまっていることがあると家族に指摘される
- 息苦しさを感じて目が覚めることがある
- むせて目が覚めることがある
- 夜中に何度も目が覚める
- 眠っているのにトイレが近い
- 寝汗をかいている
- 睡眠時間は十分なのに寝覚めがスッキリせず、熟睡した感覚がない
- 目覚めたときに口の中が渇いている
- 朝から頭や体が重い
- 運転中など集中しなくてはいけない場面で、強い眠気を感じる
- 倦怠感や疲労感が続く
いくつあてはまったでしょうか。もし、複数の項目があてはまったなら、早めの検査をお薦めします。
睡眠時無呼吸症候群に罹患すると、日中の活動が阻害されるのはもちろんのこと、気分の落ち込みやうつ症状が引き起こされることすらあります。さらに高血圧や不整脈、動脈硬化を促進するとも。心筋梗塞や脳卒中という危険な症状の原因になりますから、少しでも早く治療した方が良いのです。
おうちでできる対策とは?
みずほ台サンクリニックでは睡眠時無呼吸症候群外来も行っていますが、おうちでできる対策もあります。
舌根の沈下が原因であれば、横向きに寝ると症状が改善されることが少なくありません。仰向けで寝ると、どうしても舌根などが上気道に落ち込んでしまいがちですから、横を向くと上気道の閉塞が軽減されることもあるのです。そうとは言っても睡眠中の姿勢は意識しづらいもの。横向きで寝る習慣のない人は、抱き枕などを使用してみてはいかがでしょうか。
適正体重を維持し、太りすぎないのも重要です。特にのどや首周辺の脂肪沈着は、睡眠時無呼吸症候群発症に大きく関連していますから、体重の管理に気を配ってください。まずはBMI値を計算してみましょう。体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数字が20~22なら適正体重です。25以上なら肥満と診断されますので、ダイエットに挑戦してみてください。減量は睡眠時無呼吸症候群の予防にもなりますが、すでに症状のある方にも大きな効果を発揮します。
また、普段はいびきをかかない人が、お酒を飲んだ日だけいびきをかくことがありませんか?アルコール摂取により、筋肉が弛緩するのが原因です。筋肉の弛緩により舌根が沈下することもありますから、お酒の飲みすぎには十分注意しましょう。
そして、もう一つ。口呼吸も睡眠時無呼吸症候群の原因になると言われています。口で呼吸をすると細菌やウィルスを捕獲する鼻粘膜を空気が通過せず、フィルター機能を発揮できません。口の中が乾燥して唾液が不足すると、細菌を殺して洗い流せないため、さまざまな病気の原因になると指摘されています。さらに、口呼吸ではのどが狭くなってしまうので上気道が閉塞されてしまい、睡眠時無呼吸症候群の原因にもなるのです。
また、睡眠薬も睡眠時無呼吸症候群に影響を与えると言われています。服用の習慣がある方は、必要最低限にとどめるのも一つの対処方法です。
まとめ
今回は、睡眠時無呼吸症候群の原因や症状、おうちでできる対策をご紹介しました。これらの対策をとっても日中に強い眠気を感じたり夜中に頻繁に目を覚ましてしまったりする方は、自宅でも可能な簡易検査機器もありますので、かかりつけの病院などで相談してみてください。